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金大生のための読書案内 ― 教員から学生へ


平成23年12月5日~平成24年6月25日中央図書館で展示されました

東日本大震災を考える

田中純一先生(人間社会学域-法学類)

3月11日以降,東日本大震災の被災地には10回以上訪れています。学生の皆さんの中には被災地の状況に高い関心を持っている人も少なくないことでしょう。このタイミングで,この原稿を書くにあたり,私に期待されているのは災害復興や被災地支援などに関する書籍を紹介することだろうと判断し,一連の書籍を紹介することにしました。
紹介したものはほとんどが内容的に一般向けの読みやすいものですが,被災地復興を考える上で重要な論点を提示するものばかりです。
 本学の震災復興研究のための学習・教育環境はまだまだ十分とは言えません。しかし,東日本大震災を機に,復興に向けた法制度,支援制度,災害ボランティア/NPO活動,災害時要援護者支援などこれらを含めた災害復興研究に興味・関心を持ち始めた学生が増えているようですので,今後図書館と協力しながら,この分野の資料の充実も図っていくつもりです。
災害復興関連では研究室にも数多くの論文や資料があります。図書館で見つからない場合はぜひ研究室に遊びに来てください。

1.キャッシュ・フォー・ワーク震災復興の新しいしくみ / 永松伸吾著, 岩波書店, 2011 (図開架 369.3:N147

 被災地復興の切り札として,注目されている取り組みにCash for Work(CFW)があります。CFWとは「自然災害や紛争などの被災地において,その復旧・復興のために被災者自身が自ら働いて関与し,その労働に対して対価が払われることで,被災者の生活を支援する方法」(p.6)で,これまで国際人道支援の分野で取り組まれてきた手法です。著者によれば,東日本大震災の被災地にCFWを導入するメリットとして,①被災者に誇りを与える,②労働機会の確保,③労働を通し新たな価値の創出,の3点があります。過去には多くの発展途上国で実践されてきたCFWですが,中越地震の「弁当プロジェクト」,能登半島地震や中越沖地震被災地などで神戸のNGOが取り組んだ「まけないぞう」づくりなど,CFWに通じるコミュニティ・ビジネスが展開された事例もあります。
 東日本大震災の被災地では,いまも全国から多くの支援物資が集まっています。当面物資による支援が重要であることは言うまでもないですが,小さな経済活動を始動させ,生きがいづくりを創出することへの支援を進めることも,自立と地域再生を促す重要な試みだと思います。
これまでCFWについてまとめて書かれた書物はなかったので,CFWの基礎的理解を進めるには絶好のブックレットです。経済活動による被災地住民の自立と再生に関心のある人には参考になる1冊だと思います。

2.住宅復興とコミュニティ / 塩崎賢明著, 日本経済評論社 , 2009 (図開架 365.31:S556)

 著者によれば,16年が経過した阪神淡路大震災の被災地の復興の現実は「光と影の交錯するまだら模様の状態」(p.14)です。創造的復興の名の下で進められた都市再開発事業により,高速道路や鉄道や港湾施設などのインフラは,総じて早く復旧・復興しました。しかし,そこに暮らすすべての人が元の状態に戻ったかというとそうではないのです。地震から生き残ったものの,住宅や生活再建に苦しむ人は現在も少なくありません。著者による綿密な調査は,創造的復興の陰の部分を暴きだしています。
 復興を考える上で重要なことは,まず元の状態に戻すということです。震災前より豊かになるということは,まずこの前提が満たされた後の事です。それゆえ,さまざまな事情から自力で元の状態に戻れない人がいるのであれば,公的な支援を投入し,元の状態にまで戻すことが検討されてもよいはずです。たとえば,住宅の場合,個人の資産であるため,住宅再建に公的支援を投入することはこれまで認められてきませんでした。雨風をしのぐ家がない,暮らす場所が定まらないことへの精神的不安は相当なものです。災害によって住宅を消失した個人にとって,暮らしの最低基盤とも言える「住」がないことは,個人の復興を遅らせます。逆に基盤としての「住」がしっかりしていれば,地に足を付け,復興の第一歩を踏み出すことが可能となります。
 復興の第一歩という点で,仮設住宅についても著者は「自力仮設住宅」を提唱しています。少子高齢化が一層進み,かつてのような経済成長が望めない中,既存の仮設住宅のあり方も含め,個人の住宅復興・再建を考える上で多くの示唆を提供してくれる一冊です。

3.大震災15年と復興の備え/塩崎賢明 [ほか] 編, クリエイツかもがわ , 2010, (図開架 369.31:D134)

 東日本大震災に関連した報道に見られる「復興」の文字をテレビや新聞紙上で見るたび,いったいどこの,だれが「復興した」と言っているのかと思います。本書は,阪神淡路大震災から15年が経過した神戸の街を振り返りながら,復興に向けた備えを論じたものです。阪神淡路大震災での「創造的復興」の名のもとに進められた成長型復興策を振り返ってみれば,いまだ多くの人々が苦境に立たされている現実があります。たとえば,震災により重傷を負い,重い後遺症を負った人びとの調査はつい最近になって始められました。震災から16年が経過した今日になって顕在化した問題もあります。大量の瓦礫処理の際に発生したアスベストを吸引したことによる気管支疾患の問題がそうです。阪神淡路大震災の教訓は,マスメディアが論じるほど復興が安易なものではないということでしょう。これらの教訓を踏まえ,人間の復興を掲げた復興策を進めることが,東日本大震災の復興を進める上で不可欠であることを,本書を読み進める中で強く理解するでしょう。

4.漂流被災者 : 「人間復興」のための提言/ 山中茂樹著, 河出書房新社 , 2011 (図開架 369.3:Y19)

 未曽有の被害をもたらした被災地を歩きながら,改めて確信することは,復興の主役は人だということです。今回の津波を超える高さの防潮堤を建造する,災害に丈夫なビルや耐震構造住宅を建設する,震災を機に交通網を整備し,仙台や盛岡との行き来をスムーズにし経済の活性化を図る・・・。被災自治体の復興計画に描かれる復興ビジョンには街の復興・再生が力強く描かれています。しかし,被災した住民の復興支援策では,ぼやけたものも散見されます。長期にわたり生活に困窮するような生ぬるい復興策を進めることは許されません。
 本書のバックボーンは,「人間の復興」に基づく減災社会の構築です。減災社会を目指すためには,耐震構造の強い住宅などハード対策だけでは十分ではありません。むしろ災害という例外状況があぶり出す平時の地域社会の脆弱性を丹念に洗い出し,「個人,家庭,地域が抱える脆弱性を見つけ,克服するための努力を積み重ねていく」(p.144)ためにあらゆる知恵を総動員し,動き出すことが求められます。その点で,復興を考える際これまで言われてきた「医・職・習・住の一体的支援」はもちろんのこと,一歩進んで地域の歴史・文化,伝統・宗教,自然との付き合いといったより大きな文脈から「地域に暮らし続ける」ことの意味を考えなくてはならないでしょう。
過去の災害の教訓を活かし,東日本大震災の被災地が住み続けられる地域として再生するため,あらゆる知が総動員されなければなりません。関西学院大学災害復興制度研究所所長として長く「人間の復興」を提唱してきた著者ならではの,復興に向けた強いメッセージが本書には込められています。
 余談ですが,本書には金沢大学の被災地活動についても触れられています(一瞬登場します!)ので,ぜひお読みいただきたいです。

5.ためされた地方自治 : 原発の代理戦争にゆれた能登半島・珠洲市民の13年 / 山秋真著, 桂書房 , 2007 (図開架 318.8:Y19)

 本書は,珠洲原発反対派と行動をともにしてきた神奈川県在住の女性が,原発凍結に至るまで過程を記録したものです。買収,賛成・反対をめぐるきょうだい,親戚同士のいがみ合い,監視,恫喝,選挙での不正など,細かく描写されるドロドロした人間関係は,一瞬フィクションではないか,どうかフィクションであってくれと思いたくなるくらいです。しかし,それらは決して物語ではありません。民主主義国家の体をなす日本国内で数年前にあった現実,しかもわれわれが暮らす石川県の先端にある珠洲市であった事実なのです。
 これまで数多くの市民活動に関わってきた立場からショックを受け,考えさせられたのが第4章第3節「みずから治める道への曲折~外人・人質・選挙」です。原発反対運動などでは「私たち自身の問題」と,都市部の市民らが反対派を応援するケースがよくあります。著者自身長く反対派住民とともに戦ってきました。にもかかわらず,よそ者である著者はあるときから「外人」と呼ばれ,攻撃の対象になります。著者自身,手のひらを返したようなことばと態度に戸惑い,動揺します。
 本書を読みながら感じたことがあります。賛成派も反対波も「子や孫がこの土地を離れることなくみな一緒に暮らし続けるため」という思いでは大きな差異がないということです。それだけに,原発立地がもたらした傷は思いのほか深い。だからといって,住民が癒される時がくるのを待ち続けるだけであってよいのでしょうか。地域を二分し,人間関係をずたずたにしながらも選択した「原発凍結」を巡る一連の流れから,著者が我々に問いかけているのは,これからの地方自治,住民自治のあり方という課題です。本書は単に珠洲の問題を理解するものとしてではなく,フクシマ以降の社会を考える上でも参考になる一冊といえます。

6.災害ボランティアの心構え / 村井雅清著, ソフトバンククリエイティブ , 2011 (図開架 369.3:M972)

 3月11日以降,金沢大学の学生の多くが山形県米沢市や岩手県陸前高田市などで活動してきました。被災地まで片道約10時間を要する移動にもめげず,何度となく被災地に足を運び支援を続ける学生も少なくありません。本当に頭が下がる思いです。
 本書は阪神淡路大震災以降,自らも被災しながら災害ボランティア活動を続けている著者によるものです。阪神淡路大震災以降,国内外の被災地支援を行ってきた著者の体験に基づく災害ボランティアの心構えが余すところなく述べられています。著者との出会いが契機となり,金沢大学による能登半島地震被災地での足湯ボランティア活動は始まっています。著者が掲げる「最後の一人まで救う」という姿勢には,復興という網の目からこぼれおちてしまう人を一人たりとも見逃さない強い意志が現れており,共感します。被災地では今後,個別のニーズへの対応や心の支援がこれまで以上に求められてきます。それにともない災害ボランティア活動の中身も柔軟に変化していく必要があります。いずれにせよ,数年に及ぶ被災地支援が必要なことは間違いないでしょう。加えて,東日本大震災後も,国内外の各地で自然災害による被害が後を絶ちません。これから災害ボランティア活動を考えている人にはぜひとも読んでもらいたい,行動する人のための参考書です。

7.論 : 被災からの再生 / 関西学院大学災害復興制度研究所編, 関西学院大学出版会 , 2006 (図開架 369.3:R768)

 本書は災害に脆弱な階層,地域の復興支援のあり方について論じた論文集です。わが国では,自然災害で住宅を失った場合,住宅再建は自立再建が前提です。しかし,少子高齢化が進展し,経済が停滞するこれからの日本社会にあって,こうした前提によって自立再建できる人はどの程度いるのでしょうか。都市レベルで考えれば,あらゆるものが一極集中する東京ぐらいなものでしょうし,早期に住宅再建,生活再生を果たすのは資産家や,毎月の給与が担保されている働き盛りのサラリーマンぐらいでしょう。
一度災害に遭った場合,被災からの復興が容易なものではないことは,高坂分析による「総資産5,000万円の壁」が明らかにしています。高坂によれば,世帯総資産が5,000万円未満の場合,自力復興するためには長期の時間を要します。この分析結果が示すことは,一度災害に遭えば,庶民の大部分は生活再建に相当の時間を要し,その間苦しむことになることを示しています。
 自力復興を前提とすることは否定しません。しかし,すべての個人や世帯が自力復興できないことも事実です。いまこそ,不慮の自然災害に遭った個人を支えるための補完システムが求められます。この点で本書が掲げる「行政の措置としての支援」ではなく「被災者の権利としての支援」という視点は重要です。今回の東日本大震災の被災地支援を考えるだけでなく,地震,津波,水害などの自然災害リスクの高い国で暮らし続ける我々にとって喫急のテーマといえるのではないでしょうか。

8.つなみ : 被災地のこども80人の作文集 : 3.11日本人の再出発 / 森健企画・取材・構成, 文芸春秋 , 2011 (図開架 369.31:T882)

 静まり返っていた学校の教室から,子どもたちの笑い声や楽器を演奏する音が聞こえ始め,徐々にではありますが一人ひとりの笑顔が増えています。しかし,親やきょうだいを叩くことでしか感情をコントロールできない小学生がいます。津波で母親が行方不明となり,泣きたいくらい苦しくて悲しいのに,「お父さんの方が悲しいから」と,感情を押し殺し父親を気遣う小学生がいます。グランドに建設された仮設住宅に気遣うよう,校舎の隅っこで静かに遊ぶ小学生たちがいます。抽選で仮設住宅の入居が決まったため,友達と離れ離れになることが嫌で泣きじゃくる一年生がいます。たくさんのご遺体を目にしたため,海に近づけなくなってしまった小学生がいます。いまもなお多くの子たちが余震におびえ,津波をにくみ,制度に翻弄され,それでも被災地で足を踏ん張り生きています。
 本書は被災地に暮らす子供たちが3月11日に体験した壮絶なまでの証言集です。ことばをうまく操れない低学年の子どもたちではありますが,その一字一句の重みに圧倒されます。同時に読み手は,子どもたちが書き連ねた壮絶な言葉に隠れた部分からも,災害の悲惨さ,住みなれた土地への愛着,復興への切なる願いをくみ取る必要があります。

9.「フクシマ」論 : 原子力ムラはなぜ生まれたのか / 開沼博著, 青土社 , 2011 (図開架 539.091:K13)

 本書は,原発政策をめぐる地方の自働的かつ自発的な服従の歴史的形成過程を原子力ムラを用いて解明しようとするものです。原子力発電所などの迷惑施設をめぐる問題を理解する既往分析枠組みに「受益圏・受苦圏」という分析概念がありますが,本書に依拠すれば,「フクシマ」をめぐる課題が「受益圏・受苦圏」という単純な構図ではもはや捉えきれないものであることは,たとえば原発に対するネガティブなイメージを持つ一方で,原子力を包摂した住民の日常性という現実や,服従の主体が存在することで支配という客体がより鮮明化させる支配―服従関係などから理解できるでしょう。なにより,「フクシマ」は,交通事故のようにただの偶然的かつ一過性の不幸ではなく「日本の「成長」と「地方」が抱える問題と密接につながった軋轢が表出した必然的な帰結」(p.17)であります。
 同時に,本書を読み進めるうちに,日本の戦後成長,あるいは近代化がもたらした大きな弊害に対し,これまで同様目をそらし続けることはもはや許されないことに気づきます。
 本書は著者自身の修士課程論文をベースにしたものです。これから論文執筆に向き合う学生には,論文作成の参考にしてもらいたい一冊でもあります。

 

 

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