古畑徹先生(感性を磨く昭和の名作文庫,視野を広げる平成の秀作新書)

感性を磨く昭和の名作文庫,
視野を広げる平成の秀作新書

古畑徹先生(人間社会学域国際学類/附属図書館長)

  

【文 庫】  
 今はあまり読まれていないことと,文体を重視して選んでみました。ライトノベルもいいけれど,「硬質な」文章にもぜひ一度触れてほしいと思います。

1.安土往還記 / 辻邦生著, 新潮社 , 2005.11 (図開架 913.6:T882)

凛とした文体が,織田信長の「生」を浮き彫りにします。

2. 樅ノ木は残った / 山本周五郎著, 新潮社 , 2003.2  上(図開架 913.6:Y19:1) 中 (図開架 913.6:Y19:2) 下 (図開架 913.6:Y19:3)    

伊達騒動の「悪役」をコペルニクス的転換で深みのある人間像に描きだします。柔らかい文体のなかに緊張感がみなぎります。

3.幽霊 : 或る幼年と青春の物語 / 北杜夫著, 新潮社 , 2014.2 (図開架 913.6:K62)

みずみずしい文体が美しい追憶の物語です。青臭くて気恥ずかしいのも魅力。昭和10・20年代の東京が透けて見えます。

4.風濤 / 井上靖著, 新潮社 , 2009.1 (図開架 913.6:I58)

井上の大陸を舞台とする歴史小説のなかで唯一「元寇」期の高麗を描いた作品。その歴史解釈に疑問はありますが,抑制の効いた文体がリアルさを生んでいます。

5.江分利満氏の優雅な生活 / 山口瞳著, 新潮社 , 1989.4 (図開架 913.6:Y19)

昭和30年代後半の都会の日常が何気ない言葉で鮮やかに描かれています。郷愁とは違う昭和が見えてくるはず。

6.楢山節考 / 深沢七郎著, 新潮社 , 1987.11 (図開架 913.6:F961)

 
映画があまりに有名なのでストーリーはご存知かと。ただ,小説は一味違います。ニヒルな文章が映画とは異なる生々しさを伝えます。

      【新 書】 
         1990年代初頭の新たな知の世界を平易に伝え,今もその価値を失わない古典的新書を
        選んでみました。今回選んだ文庫より読みやすいかも。
     

 7.在日外国人 : 法の壁, 心の溝 / 田中宏著, 岩波書店 , 2013.5 (図開架 S329.9:T161)

1991年に第1版が出版されてより改訂を重ねて現在は第3版。在日外国人をめぐる諸問題を歴史的に把握するうえで必読の書です。

8.民族という名の宗教 : 人をまとめる原理・排除する原理 / なだいなだ著, 岩波書店 , 1992.1 (図開架 S316.8:N126)

民族や国家とは何かを理解するためにはぜひ読んでほしい一冊。「ぼく」とA君の平易な会話のなかで思考・思想が深められていく過程が秀逸です。

9.博覧会の政治学 : まなざしの近代 / 吉見俊哉著, 中央公論社 , 1992.9 (図開架 Ch606.9:Y65)

 
「まなざし」の場としての博覧会を権力装置として捉える視点は,学生諸君には新鮮ではないかと思います。事象をどう読み説くべきかがよくわかる一冊です。

10.メッカ : イスラームの都市社会 / 後藤明著, 中央公論社 , 1991.3 (図開架 Ch228.5:G684)

読み進めるにつれ,今の我々とは異なる社会・世界の存在が理解でき,イスラームとアラブに対する誤解が解けていきます。再評価されるべき一冊です。

11.「成田」とは何か : 戦後日本の悲劇 / 宇沢弘文著, 岩波書店 , 1992.2 (図開架 S687.9:U99)

昨年9月に亡くなった日本を代表する経済学者・宇沢弘文氏が成田空港問題の「仲裁役」となった際の記録。いまの沖縄問題が二重写しにみえてきます。

12.動物裁判 : 西欧中世・正義のコスモス / 池上俊一著, 講談社 , 1990.9 (図開架 230.4:I26)

13~18世紀のヨーロッパではブタやミミズが普通に裁判の被告になりました。時代によってものの捉え方が変わることがよくわかる,本当に面白い一冊です。