環境学コレクションシンポジウム
金沢大学附属図書館〈環境学コレクション〉公開シンポジウム
里山×里海×文学
“Satoyama x Satoumi x Literature”
平成25年7月20日(土)9:45~17:30
私たちが頭の中でイメージする里山・里海と,実際の里山・里海は同じものでしょうか。このシンポジウムでは,〈里山・里海〉という言葉と環境について考えます。
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プログラム
9:30 受付
9:45 開会挨拶: 柴田正良(金沢大学附属図書館長)
9:55 趣旨説明 シンポジウムコーディネーター: 結城正美(金沢大学教授)
10:00 基調講演: 里山 ―想像された風景 【逐次通訳付き 日本語での講演になりました】
ハルオ・シラネ(コロンビア大学教授)
11:20 休憩
11:30 報告1: なぜ里山なのか ―近代の自然言説から
生田省悟(金沢大学教授)
12:00 報告2: 中世日本の「里」と「山」 ―加賀軽海郷の開発と洪水
黒田智(金沢大学准教授)
12:30 昼食休憩
13:30 基調講演: 里山: その実態の歴史的変遷と現代的表象
湯本貴和(京都大学教授)
14:50 休憩
15:00 報告3: 里の不在 ―『もののけ姫』の衝撃
野田研一(立教大学教授)
15:30 報告4: 里海としてのケープコッド
村上清敏(金沢大学教授)
16:00 報告5: 里山ブームとは何か ―風景,場所,ゾーン
結城正美(金沢大学教授)
16:30 休憩
16:45 ディスカッション&総括
中村浩二 (金沢大学特任教授/金沢大学里山里海プロジェクト研究代表)
17:30 閉会
岩手の山村の人びとに耳を傾けつづけた大牟羅良の著書『ものいわぬ農民』(1958年)に、こんな一節がある。まだ山蔭に雪を残したまま、種蒔ざくら(こぶし)の咲く季節になった。古着行商で足しげく通う村の一軒でその家のヨメと雑談しながら、こぶしが咲いて気持ちのよい季節になった、と言う大牟羅に、ヨメの表情は暗い。こぶしの花が咲くとまた野良仕事が始まる、だから憂鬱だ、というのだ。こぶしの花は、初春の里山に訪れた「気持ちのよい季節」を象徴する一方、里山のきびしい農作業の始まりを告げるものでもある、ということが鮮やかに示された一節である。このような里山の風景の両義性に加え、大牟羅の記述には、〈里山里海〉と一括りにされがちな農村と漁村の価値観が、じつは根本的に異なることが示唆されてもいる。家父長制にもとづく農村の人間関係のあり方は、漁村にみられる労働する個としての意識とは相容れない、という指摘はその一例である。このように、『ものいわぬ農民』には、里山という言葉は用いられていないものの、里山を美化しがちな外部の視点と、里山を生活の場とする内部の視点との複雑な関係が読み取れる。
物理的環境としての里山・里海と表象としての里山・里海は、絶えざる抗争と交渉の関係にある。この公開シンポジウムでは、文学、記述、映像における里山・里海の表象に目を向け、里山・里海言説の襞に分け入り、私たちが〈里山・里海〉とよぶ世界をめぐる言葉と環境の関係に迫りたい。
問い合わせ
金沢大学附属図書館 総務係 insomu@adm.kanazawa-u.ac.jp
主催: 金沢大学附属図書館
金沢大学里山里海プロジェクト
協力: 科学研究費助成事業基盤研究(B)「文学的交感の理論的・歴史的考察―「自然―人間の関係学」」
能登オペレーティングユニット
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