積読の勧め?!

 

積読の勧め?!         

        中谷壽男先生(医薬保健研究域-保健学系)

 

 無駄に本を買って,積んだままで読まれもしない本が溜まり,今日まで来ています。18歳の時に浪人で金沢市に住むことになり,時間を見て本屋に行って,立ち読みしては,買えそうな本,ほとんど文庫を買っては,夜寝る前に濫読していた。岩波文庫や岩波新書を読まないといけないと思いが強かった時期です。富山の大学の医学部に入学しても,この癖は抜けずに,現在に来ています。途中,引越しがあり,部屋の広さという物理的なことで,古本屋へ本を持ち込んだこともありますが,後で後悔してしまったことも。書物に囲まれているのは気分が良いのですが,お金の無駄遣いと思いながら,もっと研究に精を出さないといけないとも思いながら,毎日を過ごしています。
 積読はやめられませんが,あまりお勧めはしません.
 ここ10年くらいの中で,何となく面白かった本をあげてみます。解剖学でも肉眼解剖学がかなり好きなため,やや偏った本でかつ濫読なので,読んだ後からほとんど内容は忘れてしまっているので,適切な書評にはなっていないかと思いますが(耄碌か認知症に近づいているかもしれません),参考にしてください。
 

1)
細胞の中の分子生物学 : 最新・生命科学入門/森和俊著, 講談社, 2016.5 ブルーバックス (中央図開架 463:M854)
   細胞内の小胞体の機能に関して著者が発見したことを説明するために,分子生物学を簡便に説明している。
2)
虚偽自白を読み解く/浜田寿美男著, 岩波書店, 2018.8 ( 中央図文庫・新書 S327.62:H198)
 警察,検察の尋問で,なぜ自分が犯罪を行なっていないのに,自白をしてしまうのかが心理学的に記載されている.日常でも起こりうる心理状態だと言うことが納得できる.
3)
病の皇帝「がん」に挑む : 人類4000年の苦闘/シッダールタ・ムカジー著 ; 田中文[訳], 早川書房, 2013.8 (中央図開架 491.65:M953:1,2)
4)
がん : 4000年の歴史/シッダールタ・ムカジー著 ; 田中文訳, 早川書房, 2016.6 ハヤカワ文庫NF (中央図開架 491.65:M953:1,2)
 著者の博学が遺憾なく発揮され,ファーバーの活動を中心に,人とがんとの戦いが躍動するように描かれている.
5)
解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯/ウェンディ・ムーア著 ; 矢野真千子訳, 河出書房新社, 2013.8 河出文庫 (中央図開架 289.3:H945)
 多数の死体を解剖し,外科医として働き,多数の標本を作製した奇人の話であり,医学生には興味深いと思う.
6)
ブルマーの謎 : 「女子の身体」と戦後日本/山本雄二著, 青弓社, 2016.12 (中央図開架 367.21:Y19)
 今は消えてしまったちょうちん型ブルマーと密着型ブルマーの始まりと終わりを通して,女学生の運動着の考え方の変遷がみて取れる.
7)
痛覚のふしぎ : 脳で感知する痛みのメカニズム/伊藤誠二著, 講談社, 2017.3 ブルーバックス (中央図開架 491.378:I89)
 痛点は他の感覚である触圧,温冷点より多くあるが,神経はそれぞれ異なるのはなぜかと思い読んだが,それはいまひとつすっきりしなかったが,痛みそのものの理解は深まる.
8)
世界はジョークで出来ている/早坂隆著, 文藝春秋, 2018.6 (中央図開架 319.04:H412)
 ジョークは面白いと改めて思った.自分も上手いジョークを.この著者は他にもジョークの本を出しているので楽しんでみては.
9)
中学性日記/シモダアサミ著, 双葉社, 2014.2 (中央図開架 726.1:S556:1)
 漫画なので,気楽に中学生は何を思っている/いたかと興味を持って読めるかと.
10)
なぜペニスはそんな形なのか : ヒトについての不謹慎で真面目な科学/ジェシー・ベリング著 ; 鈴木光太郎訳, 化学同人 (2017/3/2) (中央図開架 491.35:B511)
 確かにペニスはこの形かなどの色々な話題があげてあるが,ゲイの著者の面目躍如の話もある.
11)
グレイ解剖学の誕生 : 二人のヘンリーの1858年/ルース・リチャードソン著 ; 矢野真千子訳, 東洋書林, 2010.9 (中央図開架 491.1:R524)
 今も解剖学書として世界中で使用されているGray’s Anatomy を最初に作製した2名.グレイが意外と出世欲に満ちていたことが分かり,人を高める要因は何かを考えさせられる.
12)
江戸の骨は語る : 甦った宣教師シドッチのDNA/篠田謙一著, 岩波書店, 2018.4 (中央図開架 469.4:S556)
 シドッチか日本人かを同定して行く研究過程,そこに研究費や発表のことが絡み,最後に復顔されたシドッチが博物館で公開される流れはとても面白い.
13)
嗅覚はどう進化してきたか : 生き物たちの匂い世界/新村芳人著, 岩波書店, 2018.10 岩波科学ライブラリー (中央図開架 481.37:N713)
 教科書を読んで分からなかったら,この本を読むと匂いに関してはかなり理解できるのではないかと思う.何十万とも言われている匂いを約400種類の嗅覚受容体がどのように嗅ぎ分けるかをとりあえずは納得するのではないだろうか.
14)
免疫と「病」の科学 : 万病のもと「慢性炎症」とは何か/宮坂昌之, 定岡恵著, 講談社, 2018.12 ブルーバックス (中央図開架 491.64:M685)
 慢性炎症を免疫の面から捉えて記載されているので,なるほどと思いながら楽しく読むことができるのではないかと思う.
15)
学問の発見 : 数学者が語る「考えること・学ぶこと」/広中平祐著, 講談社, 2018.7 ブルーバックス (中央図開架 289.1:H668)
 もともと伝記を読むのは好きだが,数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞をもらうような数学者の考えを知るのもいいだろう.
16)
献体 : 遺体を捧げる現場で何が行われているのか/坂井建雄著, 技術評論社, 2011.7 (中央図開架 491.1:S158)
 医学歯学の基礎科目の解剖に使用されるご遺体がどのように大学に集められるかを記載してあり,献体を知りたい方は一読すると良い.