西田幾多郎関連貴重資料

金沢大学附属図書館で所蔵している,西田幾多郎関連の貴重資料です。

 

西田氏実在論及倫理学 / [西田幾多郎著]
[金沢]:[出版者不明] , [推定:1907]. 141p ; 23cm 

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善の研究 / 西田幾多郎著(初版)
東京 : 弘道館, 1911. 261p ; 23cm 
* 暁烏文庫所蔵分 A121.9:N724:a-1

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解説
日本を代表する哲学者,西田幾多郎(1870-1945)は,金沢大学の前身校の一つ,第四高等中学校予科に1887(明治20)年に入学し,その後,第四高等学校(四高)で学んだ後,1894(明治27)年,帝国大学哲学選科を修了した。就職活動の苦労を重ねた後,1899(明治32)年に四高教授として金沢に戻り,論理,倫理,心理等の授業を担当した。その後,西田は京都帝国大学助教授に就任し,1911(明治44)年,日本最初の哲学書と呼ばれる代表作『善の研究』を出版するが,その出発点は四高時代にあった。四高教授として行った講義の内容や,当時執筆した論文をまとめたものが『善の研究』なのである。

 

初出は次のとおりである。そのすべてが,西田が四高教授として在籍していた1909(明治42)年7月までにまとめられている。

  • 第1編「純粋経験」の初出:西田幾多郎(1908)「純粋経験と思惟及意思」 北辰会雑誌第51号及び52号の付録
  • 第2編「実在」の初出:西田幾多郎(1907)「実在に就いて*」哲学雑誌第241号 *目次では「実在に就て」
  • 第3編「善」の初出:西田幾多郎(1908)「倫理学説」東亜之光 第3巻第3-4, 6-8号に分けて掲載
  • 第4編「宗教」第1-3章の初出: 西田幾多郎(1909)「宗教に就て」丁酉倫理會倫理講演集 第80輯
  • 第4編「宗教」第4章の初出: 西田幾多郎(1909)「神と世界」丁酉倫理會倫理講演集 第82輯
  • 第4編「宗教」第5章の初出: 西田幾多郎(1907)「知と愛」精神界 7巻8号

この中の第2編,第3編のもとになった印刷物としては,印刷に関わった小笠原秀美(四高生)や当時の学生のリーダー格,河合良成(四高生)の証言,西田の日記での記述,後の研究者(下村寅太郎,茅野良男等)の報告によれば,『実在論』『倫理学』そして『西田氏実在論及倫理学』があり,これらは1906~1907年に印刷されたと推定されている(『西田氏実在論及倫理学』より先に印刷されたと考えられる『実在論』『倫理学』については,現在,実物確認,所在確認はできていない)。

 

2022年4月,石川県西田幾多郎記念哲学館 浅見洋館長から,金沢大学附属図書館に,上記『西田氏実在論及倫理学』の所蔵状況に関するレファレンス質問があり,その所蔵を中央図書館 駒井文庫の中の1冊として確認した。この本は,日本の哲学史研究者間で長年「幻の本」と呼ばれていたものであり,その本が確認されたことについて,2022年6月3日に西田哲学館と金沢大学附属図書館の共同で記者会見を行った(→:記者会見の際の報告記事)。

 

『西田氏実在論及倫理学』は,日本の哲学史研究上重要な資料であるため,金沢大学附属図書館の暁烏文庫で所蔵していた『善の研究』(弘道社版,初版本)と合わせて,電子化を行い,2023年3月,当館Webサイトから公開を開始した。

 

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