ペリー提督自筆署名入り『日本遠征記』
Narrative of the expedition of an American squadron to the China seas and Japan
M.C. Perry[著], Francis L.Hawks[編] .
1856年刊 [特別資料室 291.099:P464:1~3]
解説
江戸時代末期、日本開国のきっかけを作った、アメリカ合衆国ペリー提督の日本遠征の記録をフランシス・M・ホークス牧師がまとめた著作の初版本。金沢大学附属図書館では、米国議会の公式文書(上院では 79 号,下院では97号)として刊行されたフォリオ版全3巻本を所蔵している(第4巻の存在は確認されていないようである。この辺の経緯については、巻末に上げた、山下洋一(2003)参照)。
この本学所蔵本には、初版本であることに加え、2つの重要な情報が掲載されている。まず第1に特筆すべきは、第1巻の標題紙にぺリー直筆による署名が入っていることである。この署名は、遠征に同行したジョージ・ジョーンズ牧師に贈呈したことを示している。
もう一つの重要な情報は、第1巻表紙裏に、「裏張文書」とも言うべき古い新聞の切り抜きが貼付されていることである。小さい活字で、退色しているため判読困難な個所もあるが、ハリス(ペリーの条約締結後、日本に最初に乗り込んだアメリカ総領事)がペリーに宛てた手紙(「1857年10月27日 下田」という日付と地名が確認できる)で、ハリスが日本に来たいきさつ、ペリーから贈られた『日本遠征記』を読み、自分の日本観と比較して、今後の日本側との交渉の行く末などにも言及した興味深い内容となっている。
この本は、三森良二郎氏(第四高等学校卒、加賀市出身)が昭和14(1939)年アメリカ滞在中、古書店で発見したもので、昭和41(1966)年、本学に寄贈された。裏張文書については、誰が、何のために、何新聞から切り抜いたか等については不明である。このことが判明すれば、本学所蔵本のルーツも判明するのかもしれない。
この『日本遠征記』初版本については、以前から金沢大学附属図書館の蔵書を代表するお宝として、随時展示等を行って来た。それらを含め、所蔵本の詳細については、以下の文献を参照されたい。
橋本哲哉. 金沢大学附属図書館とペリー「日本遠征記」:幕末・明治期古写真等資料展に寄せて.1997. ※「幕末・明治期古写真等資料展:忘れられた日本の風景,風俗(1997年11月25日~12月2日)」のために作成されたリーフレット
山森専吉 .ペリー署名「日本遠征記」裏張文書の研究. 1977. [中央図書庫 020:Y19]
山森青硯.ペリー署名日本遠征記(遊歩道). 金沢大学附属図書館報「こだま」第70号.1982.
三森良二郎著.わが九十年の追憶.畑ミサ(発行).1996 ※三森氏の自伝でp.59-60にこの本についての記載がある。
ペリー提督のサイン入り「日本遠征記」全三巻 金大図書館へ寄贈 三森良二郎さん:直筆に間違いない 米公使が太鼓判. 北國新聞1966年8月23日号
なお、金沢大学附属図書館では、全4巻を日本語に翻訳した以下の版も所蔵している。
ペリー [著] ; オフィス宮崎翻訳・構成. ペリー艦隊日本遠征記. 栄光教育文化研究所, 1997, 4冊. [中央図書庫 291.09:P464:1~4]
また、金沢大学附属図書館では、上記の『日本遠征記』に加え、もう1冊、「もう一つの日本遠征記」ともいうべき、以下の資料を所蔵している。
Message of the President of the United States, transmitting a report of the secretary of the navy … relative to the naval expedition to Japan
1855年刊 [特別資料室 291.099:P464]
この資料については、以下の文献を参照されたい。
山下 洋一. ペリー提督「日本遠征記」ともうひとつの遠征記録. こだま:金沢大学附属図書館報. 2003, 第151号, p.2-5.