井田文庫_浄瑠璃丸本目録

昭和25年12月 井田竹治氏 寄贈

『浄瑠璃丸本 目録』

(総計112冊)


表紙1ページ2ページ3ページ4ページ5ページ6ページ7ページ8ページ9ページあとがき


あとがき

 教育界に一生をさゝげられた井田竹治氏は又その余暇に浄瑠璃丸本の収集に盡粋されたのでありますが、今回本学図書館に其の百拾余種を寄贈されたことはまことに感激の他はありません。
 丸本というのは、いわゆる浄瑠璃の俗称で院本、正本ともいゝ、外題の全篇悉くを記したもので、丸本は完本を意味する所から生れたのであります。江戸時代文藝の精華であつた民衆芸術、浄瑠璃の文献が大部分散逸し、その幾分が刊本にされた以外は殆ど見ることが出来なくなったのは痛惜に堪えません。
 明治三十二年東大国語研究会に六百余種の丸本が購入されこれを基にして高野辰之博士の手で正確な目録を編纂されたものが残っていますが東大で収集されたものも大正十二年の震災で烏有に帰したのでもなかろうか。今回寄贈を受けた丸本の中にはこの目録にも見られないものも数えられまことに貴重なものであります。
 又この中には明和から寛政年間に現れた作者管専助は能登の出身(別人説もありますが)といわれています。時代が離れているとは言え今日郷土の作家泉鏡花や徳田秋声の様に私だちの記憶に登らないのも注目されてよいことゝ思います。
 以上簡単に紹介しましたが、重ねて寄贈者井田竹治氏に厚く御礼申し上げます。

金沢大学図書館